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CHIBAFORNIA
TOROZAKADAISHI KIRIDOSHI TUNNEL
HARAOKA PIER
初めてのヒトリ旅は房総の海岸線へ。
人生初のバイクを買った時から決めていた。初めての遠出はひとりでしようと。同時にバイク初心者な僕でも無理せず訪れることができる場所を探していた。数年前に上京してから東京の地理はだいぶ詳しくなっていたが、せいぜい電車で行ける範囲内でのことで、スマホの地図アプリをピンチインすると想像以上に東京湾が広いことに気づく。その東京湾に沿うように陸地が続いているのが房総半島だ。「房総半島」という単語に聞き覚えはあっても、そこが具体的にどこを指すのかは恥ずかしながら知らなかった。房総半島には、東京湾側のことを指す「内房」と太平洋側を指す「外房」があることも知る。東京からもほど近く普段とは違う景色を楽しめるのではないかと思い、内房を巡ることに決めて旅の準備を整えることにした。
海岸沿いのヤシの木と海が織りなす非日常。
早朝に東京を発ちアクアラインを経由して千葉県へと入る。向かう先は袖ケ浦海浜公園。ここに至るまでのルートにとびっきりの道路があると聞いていた。通称「千葉フォルニア」。真っ直ぐ続く海岸沿いにヤシの木が数百メートルにわたって立ち並ぶ。海とヤシの木と真っ直ぐな道路。確かにこれはどこかアメリカ西海岸を思わせる光景だ。
開けた直線道路をバイクで走ると左手に、東京湾越しに東京の街並みとさっき通ってきたアクアラインが見える。しかも、この日は快晴で雪をかぶった富士山も奥に見えるという最高のご褒美付き。早朝の少し冷たい海風に吹かれながらもからだ全身で感じられる空気感が心までも揺さぶった。
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SPOTCHIBAFORNIA
光と風をまとい通り抜けるトンネル。
千葉フォルニアからは国道127号(通称「内房なぎさライン」)を通って南下することに決めていた。内房なぎさラインは海の近くであると同時に、程よくアップダウンがある山道にもなっており走っていて気持ちのいい道路だ。右手には海や富士山を視界に入れながら疾走する。海岸線を走るルートであるから、海の景色ばかりになってしまうかと思っていたところ、ルート上に特異なトンネルがあるということを知り、そこに立ち寄ることにした。海側の右手ばかりに気をとられていると見逃しそうな場所にそれはあった。道路沿いの左手に赤い鳥居が見える。それがトンネルへの入口の目印。鳥居をくぐり道なりに進むと高さ約10メートルほどある垂直に切り立った岩が突如と表れた。「燈籠坂大師の切通しトンネル」と呼ばれる手彫りのトンネルだ。誰もが思い描く半円の形をしたトンネルではなく、必要最低限の岩をくり抜いただけのような今まで見たことのない形をしている。日光が差し込む幻想的な雰囲気を肌で感じつつ、トンネルを通り抜けていく。
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SPOTTOROZAKADAISHI KIRIDOSHI TUNNEL
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サーフィン
SURFING
ヒトリ旅だからこそできる
自由気ままな遊び方。
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サーフィン。房総半島をバイクとともに旅すると決めてからやりたかったことのひとつだ。房総半島のサーフィンのメッカは「外房」らしいのだが、穏やかな波の日が多い「内房」はSUPなどの他の海のアクティビティが人気らしい。ただ、バイク旅の途中で立ち寄るには、のんびりと楽しむことができる「内房」の海も捨てがたい魅力がある。しかも、燈籠坂大師の切通しトンネルの南にある竜島海岸と岩井海岸の海は透明度が高く、海をぼーっとひとりで眺めているだけでも日々の疲れを癒してくれる。
バイクの上から途切れ途切れに眺めていた内房の海は、地に足をつけて改めて見渡すと本当に穏やかで心がスッと洗われていくようだ。いつもは東京湾を挟んで東京側から房総半島を見ていたが、逆側から眺めるといつもとは違う景色の広がりに新鮮さを感じる。さっきまであの海の向こう側にいたことが嘘のように思えてくる。ここまで自分を運んできてくれたレオンチーノのことが一瞬頭をよぎり、海へと駆け出す。
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SPOTMINAMIBOSO
海へと繋がる不思議な異空間。
サーフィンは夕方前には終わらせるつもりでいた。夕日を眺められるとっておきの場所に足を運んでみたかったからだ。その場所は原岡海岸にある「岡本桟橋」。全国でも数少ない木製の桟橋がかかるところだ。内房は西側に海があるため、夕日を眺めるには格好の場所でもある。バイクにまたがり南下をはじめると徐々に影が長くなり日が暮れていくことを感じる。思ってた以上の長時間の走行になったが不思議と疲れは感じず、バイクで走れる楽しさとここまでひとりで来れた高揚感で興奮していた。岡本桟橋の前にある駐車場にバイクを止め、ヘルメットを脱ぐ。すると、あまりの景色に息を飲んだ。海へと真っ直ぐ伸びる木の橋。ただ、それだけのことなのに、どこか異世界に迷い込んだような気持ちになっていく。穏やかに押しては返す波の向こうには夕日に照らされた富士山が見え、ただただ佇み時間が流れていくのを感じていた。
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グランピング
GLAMPING
自然の中で過ごせる
至福のヒトリ時間。
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日が暮れて真っ暗になってから向かった先は山の中。朝から房総半島をずっと南下していたが、来た道を戻りつつ内陸部の方にレオンチーノを走らせる。自然の中でひとりで過ごしたい気持ちがあり、そういった施設を探し出していた。キャンプ場でのテント泊も考えたが、荷物が多くなってしまうことから今回はグランピング施設を頼ることにした。
道中は街灯もまばらの山道を駆けていく。海から山へ。さっきまで潮の香りを感じていたが、今は森の香りが鼻をくすぐる。施設に着くと大きなテントがドンと構えていた。テントの近くにバイクを止めて、今日一日一緒に頑張ってくれたレオンチーノに心の中で「ありがとう」と呟く。バイクを降りると、ホッと安堵する。初めてのバイクでの遠出に意外と緊張していたことに気づく。「ここまでよく辿り着いたな」と自分を褒めてみると、何だかひとつ成長したような気持ちになった。
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海と山。自然への疾走。
今回訪れたスポット&ルート
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レオンチーノ250
LEONCINO250
『レオンチーノ 250』はコンパクトでありながら本格的なモーターサイクル。モダンでエッジの効いたデザインのレオンチーノシリーズの⾰新的なラインを備えています。249ccエンジンを搭載した『レオンチーノ250』は、歴史に残るペーザロ発のベネリブランドの伝統、デザイン、⾰新性と、ベネリシリーズのマシンを組み合わせるというコンセプトの下に設計。伝統と⾰新は、現代の技術で再構築されたモーターサイクル。『レオンチーノ』は1951年に発売されたモデルのオマージュです。